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8.アーキテクチャを教える

★誰に?

<同僚・先輩社員を見てて思った>

・アーキテクチャやる人
 ・今後、「回路屋」は、アーキテクトとEDAオペレータに分化に拍車。
 ・アーキテクトの養成ができていない。目指しても、何やっていいのかわからず、ずるずると調整業務(PL)、マネジメント業務中心になり、技術的に重要なところは人任せになる。
 ・特に、新人・若手で、能力ある人はアーキテクトを目指すことを早く自覚してほしい。

・昔の自分に似て「迷い」がある人・・・その迷いを抱えたままPL業が増えて、その状態を「アーキテクト」として自任するしかなかったが、ここをポジティブに考えて支援したい。

<派遣さんを見てて思った>

・プロとして以下を作っていく人
 ・IC/LSIのアナログ部、プリント板レベルの回路、高速伝送回路 
 ・さらに、電源回路(DCDC)、モータードライブまでは射程に入れたい

<新人(+毛が3本生えたぐらいまで)を見てて思った>

・若い人が、あれもこれもと言いつけられ、そこから何を新たに学ぶか見出していくのはいいんだが、そこで古いことを学ぶのに右往左往するのは見てられない。

・昭和のラジオ少年的なこだわりの強い人は除外されるかも
 ・おもねる必要はないし、彼らならば自走は可能。
 ・もちろん受講、コミュニケーションはWelcome  
 ・とはいえ、最近のラジオ少年はデジタル・信号処理色が強いかもしれない。

★何を・・キーワード:アーキテクチャ

・その上位:「エレクトロニクスの理論」
 ・我々のノウハウやテクニックを下支えする
 ・中身は、フィジックス、ロジック、アーキテクチャがある
 (→物理、データ、回路 として表現できる)
 ・電子回路はアーキテクチャでとらえて理解し、そして設計、考案

・ポンチ絵でもかけるアーキテクチャ
・EDA使わなくてもできる仕事、だれかがやらなくてはならない仕事
・CAD入力前に頭の中で作る、アーキテクチャレベルのダイナミクス
(要は、C言語でシミュレーションできるレベルでも面白いんだぞ、と)

・「回路技術のとらえ方」もっと言うと「回路の勉強の仕方」を伝えたい。
 ・勉強の仕方はHowの話なのかもしれないがWhatに昇格可能なのでは?
 ・構造化された勉強の仕方は”エレクトロニクスのアーキテクチャ”を映す

★どうやって

●問題点、課題、方針

・過去、学生は、デバイス、回路、信号等を別々に履修して、それら全体を自分の中で1つの知識として纏め上げる必要があったし、実際やっていたが、昨今AIなどが勃興してそちらの技術知識の習得も必要になり、回路、信号、デバイスにかける時間が相対的に少なくなっているはず。必要なことは漏らさず、要領良くコンパクトに纏めるとよい。

・その基本線として「アーキテクチャ重視」を打ち出す。設計現場において、EDA使える人はそこそこのトレーニングで何とか調達可能だが、アーキテクトは不足している。これまで通りのやり方だと、失敗しながらアーキテクトを育てることになろうが、エレクトロニクス=回路だった時代とは違い、回路屋は肩身が狭いので、そんなことはゆるされないし、やりたくもないだろう。

・「一般電子システムアーキテクチャ論」というのはあまりない。なぜか?電磁気から系統立てて演繹される高尚な筋道のダイジェスト(必要なところだけいただいたもの)があって、その脇に、一見脈絡がないが必要とされる諸々の留意点が一そろいくっついているのがアーキテクチャなのであり、それ自体を学術にするのは困難である。家を作るのに似ているのではないか。実は、「・・の設計」という教科書が限りなく内容は近いが、「アーキテクチャ」という考えに基づいて深掘りしているのは少ないのではないか(Razavi RFはそれに近い。RFは回路より先にアーキテクチャが発明されたのだろう)。

・従来の回路理論はアプリケーションの入口でアーキテクチャの機微を考える前で終わってしまい、あまり面白さが伝わらないのではないか。アーキテクチャ検討において、回路理論がどのように使われるかまで教えてこそ理解が進む。

・学んだことだけでは太刀打ち出来ない非理想性、取り扱い方を知らないと、理解不足でシミュレーションに走る。

・いきなりエレクトロニクス全体を射程にするとボケる。まずは、限定したところについて、いずれは「アーキテクチャを考えるために必要なこと」に昇華することを目指して「あれも、これも」をやってみる。

・実は、 「あれも、これも」の部分は、様々な科目で、深くはないが少しずつは語られていたことを想定し、それらを、一階層上から体系づけて示すわけである。

・まずは「抵抗」がよいだろう。システムのどの部分の抵抗なのか明示できるとよい。

★備忘:各技術の教え方考察

●従来の回路理論はどう編まれていたか

既存教科書は、既に抽象化された素子の組み合わせで構成された回路網とその解析方法が列挙、分類されていて、これはこれで事典としては貴重であるが、筆者は、学び始めの段階で、これが電気工学の基礎だと言われても当惑したものである。 (ま、それは中学、高校の話だ)

・弱電にも強電にも使えることを想定していた?

・交流回路偏重

 ・基礎としては仕方がないにしても、トランスや三相交流が出てくると、もう強電の話にしか聞こえないかも

回路理論って、急いでイデアの世界に行ってしまう。腹落ちしてないので、置いてきぼりを喰らった気分になる「信号論と回路技術」という視線を維持したい

中学の技術・家庭でラジオやアンプを作ったが、コイルやコンデンサの話はスキップしていたのではないか?コイル、コンデンサ、インピーダンスは高校でやっと勉強していた。

●回路網諸法則・定理

KCL KVL 

重ね合わせの理 相反定理

テブナン ノートン 全電圧(ミルマン) 全電流

補償定理 

供給電力最大の法則 テレゲン

なんでこんなにいっぱいあるのか? 定理は基本法則から演繹できる (教科書はここが詳しい)

この体系をVisualizeしよう(川上本とかに書いてあるがよくわからん)

●複素

お隣に振動論があったはず。それを借用したことは否めない。

テスラ?が、概念上の産物であった「交流」や、それを使う機器を作ってしまった。そのせいで、電力系統の基本概念かつ実体としての「交流」を習得するようになった? 強電分野に振り回されないようにしたい。

否。強電の前からあった。電気技術史に基づく、回路技術のマッピングをすれば、複素がどう出てきたかは語れるようだ。(始まりは「電信」だったと・・いきなり分布定数)

●電流・信号伝搬の正確な描像

50Ωの伝送線路を使って、信号伝搬とか、熱雑音とか。実際に電子の移動速度を数値的に明らかにしたり、変位電流って物理的にどうなっているか、など

●回路の動作記述には2つの方向性

・周波数軸に帰着される LTIまたは変調されたLTIシステム ・・・ 数式の記述に親和性高い。数式が困難でもグラフで解析的に示せる。

物理ワールドとシステムの関係性を語ることができる。
時間軸波形と周波数スペクトルの対応について習熟必要。

・時間軸に帰着される シーケンスや制御を含むもの ・・・ フローチャートでの記述に親和性高い。言葉による説明がより重要。アーキテクチャ内に明示的記憶要素を備えることが前提となるものが多い。その記憶要素へのアクセスの仕方とビットレートの対応について習熟必要。

データとシステムの関係性を語ることができる。特に「同期技術」「スイッチ技術:データに同期した正しいタイミングで切り替える手法」を切り出せる

●線形代数の役割

・線形代数の前段階としては、連立方程式の導出があり、LTIなら機械的にできる話である

(それでも間違えないようにやりきるのは大変だし、ホイートストンブリッジの一般解など、見た目より煩雑になる)

 固有の話として、非線形要素や時変要素があるときにどのように線形化するかがIssueに。バランスよく教えることが必要。

・さて、回路を解く段階で、行列、つまり線形代数の話は避けては通れないが、これを最初から振りかざしてはいけない。線形代数を使いこなすことだけを目指されても困る。

・回路に限らずある解析対象に対していろいろ工夫して検討して、連立方程式を作ることを中間ゴールとして、

「ここまでこればあとは線形代数に頼ることができる」というユニバーサルな筋道を知ってもらうこと。「ふうん、よくわからないけど線形代数ってそんなに頼れるんだ」と思ってもらえばよい。

●上位階層の話になるが、「情報」を「信号」として伝送していることをしつこく語る

●様々な信号の表現をみせる

・時間軸と周波数軸は基本。その他、アイパターン、コンスタレーション

・真理値表、状態遷移図、通信フロー図なども場合によっては必要

●「信号」はシーンに応じて振幅と周波数を明確にして語る。一般論であっても必ず例示する。 

  → 「小信号」のリアリティ。AC100V、電池1.2V等、それに対して、信号の振幅はどんなものなのかイメージしていないと、非線形度合いもわからない。

    1mV ・・・ 線形なのも納得、x10でも大丈夫そう

    10mV ・・・ x10でそろそろ気になるか

    100mV ・・・ バッファすら厳しいだろう

    1V ・・・ これはデジタル

  小さいほうも。今度はSNRとのせめぎあい

●<解説、演習>その問題が発生する場面 必要な情報 定式化 解き方 説いた結果の解釈(式の表示) 結果の妥当性予測(どこまで使えるか)

●<演習>よく知られている回路や構造は、例題から。回路の名前、用途、解析のツボを丁寧に説明したうえで、網羅的なバリエーション。

 ・インダクタンス ・電気伝導度 ・ブリッジ ・FB(明示、非明示)を含む小さい電子回路

●実物

・説得力のポイントを「理解してアーキテクチャを記述できたかどうか」に置き、ここはぶれないようにする。(教科書はそうなっている。一方CQ出版ものには製作記事も多いね)

・モノを作ろうにも、アーキテクチャの検証は大規模になりがち。だらだらやっていると焦点がぼける。基本は「無し」に耐える内容にすべし。

・「発振器」「アンプ」程度の単位で設計、もしかしたら発明してみせたものについては、実物の説得力が欲しくなる。ただ、これで自分の時間を使いすぎるのは本意ではない。

・必要なら誰かに作ってもらうようにしたい。

・とにかく、実物力で勝負はしない。実物は数多くの先達が居て、同じ機能のものをつくるならば、とても太刀打ちできるものではない。

●技術MAP(枠組)を提供

・特定の技術分野に対し、そこで必要になる技術MAPを示す

・その上で、要素となる技術を一つずつ教授

・新しい分野に対して、新たに枠組みをつくりなおしてくれ!、不足を補ってくれ!と言う

●アーキテクチャの選択

 ・アーキ紹介の際には、なぜ、今、そのやり方が選択されるのかを示す
 ・使われなくなったアーキ(例:パイプラインADC)を紹介するときは、そのアーキへの取り組みが何を遺したかを示す
  ・その一部がサブシステムとして生きていること(フラッシュADCのコンパレータ)
  ・教訓(フォールディング、連続時間アナログでいろいろやると遅延がクロック周期を超える)